インクルーシブUX ‐ アシスティブテクノロジーを使ったデザインのテスト

本記事は、質の高い技術教育を通じて個人の能力を高めることに情熱を注ぐZero To Mastery 社のコンテンツライターであるケルシーさんによるゲスト投稿です。彼女は、新しいスキルを習得するまでの道のりを伝えて刺激する魅力的なコンテンツの作成に取り組んでいます。
自身のデザインが、AT(アシスティブテクノロジー)に頼るユーザーにどのような影響を与えるか考えたことがありますか?今日のデジタル環境では、「インクルーシブ」は単なる流行語ではありません。
多くの障害者には、オンライン環境で過ごすのは大変であり、彼らの体験はデザインに大きく左右されることがあります。
アクセシビリティの基準を満たすだけでなく、どんなユーザーの心にも響くユーザー体験を創造することを想像してみてください。AT のテストをワークフローに組み込むことで、どんな人のユーザビリティも上がり、視聴者とのより深いつながりを築くことができます。
UX におけるアシスティブテクノロジーについて
AT(アシスティブテクノロジー)とは、ハンディキャップのある人がデジタルコンテンツとやりとりするのを助けるツールであり、UX デザイナーとして、このテクノロジーを理解するのは、インクルーシブな体験を作る上で非常に重要です。例えば、スクリーンリーダーは、目の見えないユーザーのためにテキストを音声に変換し、音声コントロールソフトウェアで、運動機能にハンデのあるユーザー向けにハンズフリーナビゲーションが実現します。
AT を使う人には、視覚、運動機能、認知など、デジタルインターフェースとの相互作用に影響を与える状態がある可能性があり、AT にはそれぞれ、ユーザーのさまざまなニーズを満たすためにデジタル環境を適応させるという、独自の役割があります。
たとえば、目の不自由な人はスクリーンリーダーを使って Web サイトをナビゲートしますし、運動機能にハンデのある人は音声認識ソフトウェアを使ってデバイスを操作します。AT を理解することで、どんなユーザーのエンゲージメントも満足度も上がり、総合性を優先することで、利用者の幅が広がり、製品のリーチと影響力が高まるのです。
総合性を念頭に置いたデザインの主要原則
インクルーシブを第一に考えてデザインする場合、肝に銘じておくべき原則がああります:
- セマンティック HTML と ARIA の役割:セマンティック HTML を使って、スクリーンリーダーにロードマップを提供する。適切な見出しタグで、ユーザーは効率的にナビゲートすることができ、ARIA の役割は、複雑な Web アプリケーションにコンテキストを提供することから、アクセシビリティが上がる。
- キーボードナビゲーション:インタラクティブな要素が全てキーボードナビゲーションで操作できるようにする。運動機能にハンデのあるユーザーの多くは、キーボードショートカット頼りであり、タブの順序がきちんと構造化されていれば、フォーム、ボタン、リンクを簡単にナビゲートすることができる。
- 色のコントラストと視覚的デザイン:特に視覚にハンデのあるユーザーにとって、高いカラーコントラストは読みやすさに不可欠であり、WebAIM のコントラストチェッカー のようなツールで、色の選択を評価することができる。また、情報を伝えるのに色だけに頼らず、テキストラベルを追加することで確実に理解できるようにすることを頭に入れておく。
- 柔軟なレイアウト:さまざまなスクリーンサイズや向きに適応するレスポンシブレイアウトをデザインする。これは、拡大表示ツールを使っているユーザーや、視界が狭いユーザーにとって有益である。
- 明確で一貫性のあるナビゲーション:ナビゲーション構造がシンプルであると、どんなユーザーにとっても使いやくなり、一貫性のあるメニューと明確な経路だと、認知に問題のあるユーザーはアプリケーションのレイアウトを理解することができる。
- 多様なユーザーを対象としたユーザーテスト:テストの段階でハンディキャップのあるユーザーに参加してもらうことで、貴重なフィードバックが得られ、よりインクルーシブな最終製品のための調整ができる。
この原則を適用することで、アクセスしやすいだけでなく、誰もが楽しめるユーザー体験を生み出すことができます。総合性を受け入れることで、視聴者の忠誠心は育まれ、製品全体の質は上がります。
テストと AT の統合のタイミング
UX デザインプロセスの主な段階で AT のテストを組み込むのは、製品を誰にとっても使いやすいものにするのに非常に重要です。以下で、いつ AT テストを取り入れるべきか見てみましょう:
- 最初のデザインコンセプト:最初からアクセシビリティを考慮する。レイアウトが AT とどのように相互作用するかを考え、ハンディキャップのあるユーザーに参加してもらって早い段階でフィードバックを得る。
- 開発段階:潜在的なユーザビリティの問題を早期に特定するために、開発中に定期的に AT テストを実施する。そしてそのテストにデベロッパーを参加させ、アクセシビリティをコーディングプロセスに組み込む。
- ユーザビリティテスト:機能的なプロトタイプができたら、AT を利用している実際のユーザーを対象にユーザビリティテストを実施する。ユーザーとの対話によって、自動テストでは見落とされる可能性のあるインサイトが明らかになる。
- アクセシビリティスワーム:チームメンバーが一緒にアクセシビリティを評価する共同テストセッションを開催することで、視点を共有して問題を総合的に特定する。
- 立ち上げ後の評価:発売後の継続的なモニタリングは非常に重要。ユーザーからのフィードバックを集め、AT の更新について常に情報を得て、製品を継続的に改善していく。
- 大きな変更またはアップデートの前に:アクセシビリティが維持されるように、重要な機能を追加する際は、AT を使って製品を再評価する。
デザインプロセス全体にテストを組み込むことで、より強固でユーザーに優しいエクスペリエンスが生まれ、早期かつ継続的なテストで、時間とリソースの節約になると同時に、総合性へのコミットメントを得られます。
AT を使った効果的なテストの実施方法
以下で、AT を使って効果的なテストを実施するための手順を一つずつ見ていきましょう:
- 必要な機器を集める: スクリーンリーダー、画面拡大、音声認識ソフトウェアなど、さまざまな AT を確実に利用できるようにする。テスト中に効果的に使えるように、このようなツールに慣れておく。
- テスト計画を立てる:目的と方法を概説した体系的なテスト計画を作成する。また、ナビゲーションやインタラクティブ要素など、デザインの特定の側面に焦点を当てる。
- テスト環境の設定:さまざまなデバイスや OS(オペレーティングシステム)を使って、実際の場面をシミュレーションする。現実的な環境で、調査結果の妥当性が上がる。
- コンポーネントテスト:ボタンやフォームなどの個々の要素を評価する。各要素が AT で正しく機能することを確認し、ユーザビリティ上の問題があれば、将来の参考のためにドキュメント化しておく。
- 全体的なユーザーエクスペリエンステスト:コンポーネントのテストが完了したら、全コンポーネントがどのように連動するかを評価する。フローや感情的な反応に焦点を当てて、ユーザーのジャーニーを検討する。
- AT に関する考察:さまざまな AT との互換性をテストする。一般的な組み合わせには、Chrome の JAWS、Firefox の NVDA、iOS の VoiceOver などがあり、インクルーシブな体験を実現すべく、より幅広い範囲での互換性を確保する。
- フィードバックに基づいてイテレーション(反復)を行う:テストからのインサイトを使って改善を繰り返し、重要なユーザビリティの問題にまず対処して継続的にデザインを改良する。
- 継続的なテストに取り組む:特に更新後は、AT を使ったデザインを定期的に見直す。継続的なテストにより、アクセシビリティとユーザーの満足度が高い水準で維持される。
- ドキュメント化と分析:テストの結果をドキュメント化する。このデータを分析することで、デザイン内の体系的な問題を示すパターンを特定することができる。
このステップに従うことで、AT を使ってデザインを徹底的にテストすることができ、より総合的な ユーザー体験につながります。AT テストを優先することで、多様なユーザーのニーズを理解し、それに応えることへのコミットメントが反映されるのです。
AT の種類とその影響
多様なユーザーのニーズに対応するには、さまざまな種類の AT を理解することが重要です。以下で、その概要を見てみましょう:
- スクリーンリーダー:視覚にハンデのあるユーザーにとって極めて重要なツール。このツールでデジタルテキストを合成音声に変換できることから、Web サイトをナビゲートすることができる。JAWS や NVDA のようなよく使われているオプションは、コンテンツへのアクセスに不可欠。
- 画面拡大器:コンテンツを拡大できるので、弱視のユーザーは特定の領域に集中できるようになる。SuperNova や WIndows Magnifier のような様々な画面拡大ツールで、ユーザー体験が大幅に上がる。
- 音声コントロールソフトウェア:この技術により、ユーザーは音声コマンドでデバイスを操作できるようになり、例えば運動機能にハンデのある人でも、ハンズフリーで操作できるようになる。例えば Windows の 音声認識 や Apple の Dictation のようなツールは、音声コントロールによってデバイスを利用できるようにすることで、ユーザーを支援する。
- ハイコントラストモード:弱視や色覚異常のユーザーの視認性を上げるのに配色を調整する。多くの OS にはハイコントラスト設定が組み込まれており、それでユーザーは視覚体験をカスタマイズすることができる。
- 代替入力装置:ユーザーは、デジタル環境を操作するのに、適応キーボード、マウススティック、または視線追跡システムに頼る場合がある。視線追跡の技術により、身体に大きな制限のある利用者は、視線を使って機器を操作することができる。
- 音声合成ソフトウェア:音声合成ソフトウェアは、失読症などの認知上の問題で読むことが苦手なユーザーのためにテキストを音声で読み上げることで、理解力を上げて読書への意欲を高める。例えば Apple の VoiceOver や Dragon のようなツールでテキストが音声に変換されると理解しやすくなる。
このようなタイプの AT を理解することで、どんなユーザーにも対応するインクルーシブなインターフェースを作成することができます。AT の影響は大きく、このようなツールが製品に考慮されることで、ユーザーは操作できるようになり、エンゲージメントが促されるのです。
UX リサーチにおける AT ユーザーの参加
AT のユーザーを UX リサーチに組み込むのは、多様なニーズを満たす製品を作るのには不可欠です。以下で、AT ユーザーがどのようにリサーチに参加できるか見ていきましょう:
- 多様な視点:AT ユーザーには、その経験によって形成されたインサイトがあることから、彼らがリサーチに参加することによって、インクルーシブな製品をデザインする上で重要な課題を特定することができる。
- ユーザー中心テスト:AT ユーザーがデザインに接する様子を観察し、標準的なテストでは気づかないユーザビリティの問題を特定する。
- 機能に関するフィードバック:AT ユーザーから、製品が AT とどの程度統合されているかについてすぐにフィードバックを得られることから、機能の改善に不可欠。
- インクルーシブデザインの原則:AT ユーザーと関わることで、アクセシビリティへのコミットメントが強化され、視聴者の信頼が育まれる。
- 参加者の募集:リサーチの参加者を募集するために、障害者支援団体に働きかける。
- リサーチセッションの実施:参加者がオープンに意見を交換できるような環境を整える。対話を促し、参加者のニーズに応じてアプローチを変える。
- インサイトに基づいてイテレーションを行う:継続的な改善のために、AT ユーザーからのフィードバックを分析し、デザインプロセスに統合する。
AT ユーザーに UX リサーチに参加してもらうことで、彼らのニーズに対する理解が深まり、より総合的な製品が生まれます。彼らのインサイトで、どんな人でもに操作できるデザインを形作ることができるのです。
コンポーネントのテストと全体的なユーザーエクスペリエンス
個々のコンポーネントのテストと全体的な UX(ユーザーエクスペリエンス)の評価の違いを理解するのは、インクルーシブな製品を作る上で非常に重要です。それぞれのアプローチには目的があり、それを統合することで、デザインは全ユーザーのニーズを満たすことができます。
- コンポーネントテスト:ボタンやフォームなどの各要素が正しく機能し、アクセス可能であることを確認することに重点を置く。
- 総合的な UX テスト:ユーザージャーニーと感情的な反応を考慮しながら、コンポーネントが全てどのように連動するかを検証する。
両方のアプローチを統合することで、ユーザビリティとアクセシビリティを徹底的に評価できます。さまざまな方法を採用し、アクセシビリティデザインツールを利用することで、個々のコンポーネントも全体的な UX も アクセス可能でユーザー に優しいものであることを保証できます。
まとめ:
AT のテストを UXデザインプロセスに組み込むことは、UX を上げる総合性への取り組みであり、AT の多様な範囲とその影響を理解することで、ハンディキャップのあるユーザーを含めた全ユーザーに対応する製品を作成できます。
デザインのライフサイクル全体を通して AT とテストを統合することで、個々のコンポーネントと全体的な UX の両方がアクセシブルになり、この技術に頼っているユーザーと関わることで、ユーザビリティの問題を特定してそれを効果的に対処するための貴重なインサイトが得られます。
アクセシビリティは継続的な取り組みであることを忘れないでください。定期的に製品を見直し、技術やユーザーニーズの進歩に合わせて製品が確実に進化するようにしていきましょう。 AT を使ったテストを優先することで、視聴者の忠誠心は育まれ、製品の品質は上がり、どんな人に対してもより豊かな体験が生み出されるでしょう。