時間の節約や矛盾の軽減、アクセシビリティの確保が可能な UI コンポーネントライブラリを構築したいと思いませんか?それには、以下を前もって知っておく必要があります:
- 主要コンポーネント:ボタン、グリッド、モーダルなどは、すべてアクセシビリティ(WCAG 2.2 AA)とスケーラビリティを考慮してデザインされる。
- デザイン規準:一貫したタイポグラフィ、カラートークン、レスポンシブブレークポイントを使って、視覚的に整合したコンポーネントを作成する。
- アクセシビリティ:インクルーシブデザインには、ARIA ロール、適切なコントラスト比、スクリーンリーダー互換性を実装する。
- バージョン管理:SemVer(セマンティックバージョン管理)を使って、更新の管理や、変更の追跡を行う。
- テスト:axe-core、Percy、Jest などのツールを使って、アクセシビリティ、ビジュアルリグレッション、コンポーネントの動作を押さえる。
- 統合: Figma や UXPin などのデザインツールと同期し、動的なテーマ設定に CSS 変数を使う。
アクセシビリティを考慮した React コンポーネントでデザインシステムを魅力的にする
必須の UIコンポーネント
この主要なコンポーネントで、先に述べた不整合の問題は対処され、後述するスケーラビリティのニーズは満たされます。そして最新のアプリケーションは、ほぼすべて(98%)これらの基本要素に依存しています[4].。
ボタンと入力コントロール
ボタンや入力コントロールのデザインの際は、以下のような機能に重点を置きましょう:
- 検証機能が内蔵されたテキストフィールド
- 単一および複数選択のオプションに対応するドロップダウンメニュー
- 複数のオプションから選択するためのチェックボックスとラジオグループ
- 二者択一用のトグルスイッチ
- 使い勝手がよくなるオートコンプリート機能を備えた検索バー
MUI Base は、WCAG に準拠したフォーカスリングの実装 [6]で強力なお手本となっており、それであらゆるデバイスで明確なビジュアルフィードバックを実現しています。
ページレイアウトコンポーネント
強力なレイアウトシステムは外せません。Material UI のグリッドシステムは傑出しており、ブレークポイントベースの応答性が備わっています[1][7]。また、統一性を保つために、間隔には 8px の基本単位を使いましょう。このアプローチにより、デザインスタンダードで説明されているように、一貫性のあるレイアウトとマルチデバイスでのスムーズな体験が保証されます。
主なレイアウトコンポーネントには以下が挙げられます:
- 適応性の高いデザインのためのレスポンシブグリッド システム
- 動的なコンテンツを配置するための Flexコンテナ
- 一貫した間隔ガイドラインを備えたカードコンポーネント
- 並べ替え、ページ付け、アクセシビリティ機能を備えたデータ テーブル
この要素で、信頼性が高くスケーラブルな UI フレームワークのバックボーンが形成されます。
ユーザーステータスコンポーネント
ステータスコンポーネントは、フィードバックの提供や、ユーザーの案内に極めて重要です。以下に重点を置きましょう:
- フルキーボードのナビゲーション付モーダルダイアログ
- アクセシビリティのために ARIA ライブリージョンを使ったトースト通知
- 読み込みの状態を示す進行状況インジケーター
- 視認性のための高コントラストのエラーバナー
- データ ビューを適切に処理するための空の状態プレースホルダー
Radzen の WCAG 準拠ソリューション[3] は、あらゆるデバイスでのユーザビリティを確保するための最小 48px のタッチターゲットを特徴としており、大いに参考になります。そしてこのコンポーネントは、アクセシブルでユーザーに優しいインターフェースを作成するのに不可欠です。
デザイン規準
このガイドラインは、前述の主要コンポーネントがら広がり、視覚的な一貫性と技術的な信頼性の両方を実現することに重点を置いています。例えば Angular Material では、原色、アクセントカラー、警告色に CSS 変数を使っていることから[9]、複雑な CSS オーバーライドを行うことなくテーマの管理がしやすくなります。
色とタイポグラフィのルール
WCAG の 4.5対1 のコントラスト比を満たすために、色とタイポグラフィに CSS 変数を使いましょう[9]。タイポグラフィのスケールを統一することで、デザインチームの78%が影響を受けているレイアウトの問題を避けることができます[2][5]。また、読みやすさと構造を改善するために、相対的な単位で明確な階層を確立しましょう:
要素の種類 | サイズ (レム) | 使用コンテクスト |
ページタイトル | 2.5 | 主題ヘッダ |
カードヘッダ | 1.75 | 部門タイトル |
本文 | 1 | 通常内容 |
バランスの取れた外観を維持するために、一貫した行の高さで見出しと本文のフォントを組み合わせましょう。例えば Figma Style Libraries のようなツールを使えば、デザインと開発の整合性を保つことができます[7]。そしてこのようなトークン化されたシステムはアクセシビリティのニーズにも対応していますが、これについては後のセクションで取り上げます。
コンポーネントの状態
各コンポーネントは、6つの主要なインタラクティブな状態を定めるべきです。MUI Base は、:focus-visible 擬似クラスを使ってフォーカスリングを管理する強力な例を提供しています[6]。主要な状態には以下のようなものがあります:
- デフォルト:コンポーネントの標準的な外観。
- ホバー:マウス操作の視覚的なフィードバック。
- 有効:押された状態または選択された状態を示す。
- フォーカス:キーボード ナビゲーションを強調表示する。
- 無効:コンポーネントが使用不可であることを示す。
- エラー:無効な入力または問題があることを示す。
UX(ユーザーエクスペリエンス)を上げるには、ホバー状態の遷移を300msの継続時間で滑らかに保ちましょう。
マルチデバイス対応
最新のコンポーネントライブラリは、さまざまなデバイス間で楽に動作できないといけません。CoreUI は、モバイル上の垂直スタックからデスクトップ上の水平配置に移行する適応型グリッドレイアウトでこれをうまく実証しています[8]。
レスポンシブブレークポイント:
ブレークポイント | 幅 |
モバイル | 320px |
タブレット | 768px |
デスクトップ | 1024px |
このブレークポイントは、「主要コンポーネント」で説明したグリッドシステムに沿ったものです。CSS コンテナクエリを使うと、より柔軟でコンポーネント固有の調整ができ、さらに、CSS clamp() を使うと、さまざまな画面サイズにわたってタイポグラフィやスペーシングを流動的に拡大縮小することができます。
アクセシビリティ規準
一貫したビジュアルデザインを維持するとともに、アクセシビリティ規準は、コンポーネントが誰にとっても効果的に機能することを保証します。このアプローチは、ユーザビリティのサポートだけでなく、先に述べたメンテナンスコストの25%削減にも対応します。この規準を遵守することで、コンポーネントをさまざまなプロジェクト間で再利用できると同時に、法的リスクの軽減にもなります。そしてこれはどちらも、コンポーネントライブラリの長期的な成功にとって不可欠です。
アクセシブルなコンポーネントライブラリを作成するには、ナビゲーションと技術的な詳細に細心の注意を払う必要があります。
ナビゲーション対応
WAI-ARIA1.2 パターンを使うと、矢印キーによるメニュー移動や Enter キーによる要素のアクティブ化など、スムーズなキーボードナビゲーションが可能になります[6]。また、フォーカス管理は、Angular Material に見られるように、セマンティック HTML 要素に依存すべきです[9]。
キーボード操作 | 想定される動作 |
タブ | インタラクティブな要素間の移動 |
矢印 | コンポーネント内の移動 |
Enter又はスペース | 現在の要素の有効化 |
esc | アクションの終了またはキャンセル |
技術要件
ARIA の役割と属性を実装することで、支援技術との互換性を確保しましょう。例えば、CoreUI for Vue は、アクセシビリティを維持しながら装飾要素を非表示にするために、.visually-hidden CSS クラスを使っています[8]。
主な技術的実践には以下が挙げられます:
- ARIA の役割と属性:モーダルには role=”dialog”と aria-modal=”true” 使い、エラー状態を示すのに aria-invalid と aria-describedby をフォームフィールドに追加する[6]。
- コントラスト規準:WCAG 2.1 AA ガイドラインに準拠し、通常のテキストでは4.5対1、大きなテキストでは3対1のコントラスト比を確保する。また、自動化されたツールは、ビルドプロセス中にコントラストレベルをチェックすることができる。
- スクリーンリーダーの互換性:セマンティック HTML と適切な ARIA ラベルを組み込む。MUI Base はアクセシビリティを重視しているが、コンポーネントライブラリだけでは完全なアプリケーションコンプライアンスを保証できないことも指摘している [6]。
ちなみに、NVDA や JAWS などのスクリーン リーダーを使ってテストすると、プラットフォーム間で一貫した動作を確認することができます。
さらに、コンポーネントのドキュメントには、実装例があるアクセシビリティのセクションが含まれるべきです。Angular Material は、キーボードインタラクションダイアグラムと各コンポーネントの詳細な ARIA ロールガイドラインを提供することで、強力な例を示しています[9]。
成長とツールの統合
品質管理が整ったら、次はスケーラブルなインフラの構築に重点を置きましょう。これは、バージョン管理、テーマ設定、デザインツールの統合という3つの重要な分野に取り組むことで達成されます。そして Turborepo のようなツールだと、依存関係が維持されたまま、プロジェクト間の更新がシンプルになります。
バージョン管理
バージョン管理 は Git を使うだけではありません。チームは SemVer(セマンティックバージョニング)を実装することで、更新や変更を体系的に追跡することができ、例えば、MUI Base は SemVer をコンポーネント固有の変更ログと一緒に使っています [6]。
バージョンの種類 | 使用する場合 | 変更例 |
メジャー (1.0.0) | 重大な変更の場合 | Prop APIの再構築 |
マイナー (0.1.0) | 新機能の場合 | 新しいバリエーションの追加 |
パッチ (0.0.1) | バグ修正の場合 | スタイルの問題の修正 |
この構造化されたアプローチにより、ワークフローの整合性が確保され、追跡されていない変更によって生じる混乱を回避できます。
テーマシステム
アクセシビリティ規準を守りながら複数のブランドに対応するには、強力なテーマシステムが非常に重要であり、CSS カスタムプロパティとデザイントークンを組み合わせることで、チームは動的で適応性の高いスタイリングの基盤を構築することができます。例えば、MUI Base はテーマ管理ににプロバイダパターンを使っています:
const theme = {
colors: {
primary: 'var(--primary-color, #1976d2)',
secondary: 'var(--secondary-color, #dc004e)'
}
}
CSS 変数を使うことで、WCAG のコントラスト比を維持しながら、実行時にテーマを切り替えることができ[6][7]、そしてチームは、コンポーネントの機能に影響を与えることなく、ベース変数をオーバーライドするプリセットを作成することができます。このアプローチにより、アクセシビリティを維持しながら、複数のブランドにまたがるスケーラビリティを確保できます。
デザインソフトウェアのセットアップ
コンポーネントライブラリでは、一貫性を維持するために、コードをデザイン ツールと同期することが不可欠であり、UXPin の Merge のような統合機能により、デザイナーはデザイン環境で制作準備の整ったコンポーネントと直接作業することができます。これでデザインと開発のギャップが埋まり、先に述べた不整合の60%削減につながります。
主な統合プラクティスには以下が挙げられます:
品質管理
先に説明したバージョン管理とテーマシステムを広げると、一貫した品質の維持は、ライブラリが大きくなるにつれて鍵となります。これにより、コンポーネントが規模が大きくなっても信頼性がきちんと維持されます。
自動テスト
多層テストのアプローチを使って、コンポーネントのあらゆる側面をカバーしましょう。主なテストの種類には、視覚的な回帰テスト、アクセシビリティ テスト、ユニット テスト、統合テストなどがあります。
テストの種類 | ツール | 重点分野 |
視覚的回帰 | Percy/Chromatic | コンポーネントの外観、レスポンシブデザイン |
アクセシビリティ | axe-core | WCAG 準拠、ARIA 属性 |
ユニットテスト | Jest | コンポーネントの動作 |
統合テスト | Cypress | コンポーネント間の相互作用 |
例えば、Atlassian のチームは本番前に毎週約15のビジュアルリグレッションを特定しています。このテストで、先に説明したアクセシビリティ標準の遵守も保証されます。
コンポーネントの更新
コンポーネントの効果的な更新には、明確で構造化された戦略が必要です。セマンティックバージョニングと非推奨通知を組み合わせることで、透明性が確保され、移行がしやすくなります:
// Example of a deprecation notice
if (process.env.NODE_ENV !== 'production') {
console.warn(
'ButtonLegacy will be removed in version 2.0.0. ' +
'Please migrate to the Button component.'
);
}
このアプローチにより、中断が最小限に抑えられながら、チームに更新されたコンポーネントの採用を促すことができます。
使用状況の追跡
メトリクスの追跡で、チームはコンポーネントのパフォーマンスと採用状況を評価できます。以下の点に重点を置きましょう:
- 採用率:主要コンポーネントの使用率を少なくとも80% にすることを目標する。
- カスタマイズレベル:カスタマイズが15% を超える場合はコンポーネントにフラグを立てる。
- エラー監視:Sentry などのツールを使って問題を追跡する。
- ドキュメントメトリクス:ガイドと例を使ってエンゲージメントを測る。
カスタマイズレベルの監視で、前述のようにワークフローの不整合を防ぐことができます。また、エラー追跡を CI/CD パイプラインに統合することで、問題が早期に特定・解決され、バージョン間で一貫した品質が保たれます。
まとめ
UIコンポーネント ライブラリは、このチェックリストに従うことで、70%以上のコンポーネントの再利用を実現し、WCAG への完全な準拠を維持できます[1][10]。そしてこの構造化されたアプローチで、先に述べたように、不整合は60%減り、メンテナンスコストは25%削減されることがわかっています。
このチェックリストを適用する際は、ドキュメントのエンゲージメントは1ページあたり2分以上や、スタイルの一貫性はばらつきが5%未満など、測定可能な結果に重点を置ましょう。このようなメトリクスは、先に述べた品質管理を使って追跡することができます。また、バージョンアップ戦略も、着実な成長を確保するために重要であることが証明されています。
関連記事(英語)
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