プロトタイプ vs MVP vs PoC:それぞれ何が違う?

プロトタイプ vs MVP vs PoC:それぞれ何が違う?

製品デザインおよび開発の世界に飛び込むと、たくさんの用語が飛び交いますが、今回はそのうちの以下の3つに焦点を当ててみましょう:

  • プロトタイプは、デザインアイデアをテストし、ユーザーからのフィードバックを得て、最終製品がどのようなものになるかをステークホルダーやデベロッパーに示すための最終製品の表現である。
  • MVP(Minimum Viable Product)とは、製品を喜んで使ってくれる最初のユーザーを見つけるためにステークホルダーが使う製品のことである。最初のユーザーを見つけるのに必要なものがすべて揃っていることから、「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」と呼ばれる。
  • 概念実証(Proof of Concept:PoC)とは、資金の確保、リソース収集、適切なものへの確実な投資のために、製品の実現可能性、実行可能性、有用性を測るのをサポートするものである。

主なポイント:

  • プロトタイプは、製品のUIとUXデザインを対象ユーザーでテストしてフィードバックをもらい、可能な限り最良のソリューションを実現することを目的としている。そして MVP は、そもそも製品を作る価値があるかどうかをチェックするために、新しもの好きを探したり PoC がそこにあることを確認するのを目的としている。
  • プロトタイプは、リソースを投入して製品を作る前に、製品をテストするのに必要な機能を備えている必要がある。MVPは完全に機能する必要があり、PoC はまったく機能的である必要はない。
  • プロトタイプ、MVP、概念実証は、ユーザーに焦点を当てて開発される必要があり、フィードバックとデザインの検証に基づいて、何度も繰り返される。

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プロトタイプとは

プロトタイプは、製品のアイデアを表現またはシミュレーションすることから、デザイナーやステークホルダー、ユーザーは主要な特徴や機能を視覚化して、相互作用できるようになります。また、プロトタイプで、開発に多大な時間とリソースを投資する前の初期段階において、デザインコンセプトの検証やフィードバックの収集、ユーザビリティテストを行うことができます。

プロトタイプには、忠実度の低いスケッチやワイヤーフレームから、最終製品に近い忠実度の高いインタラクティブなレプリカまで、さまざまな種類があります。それてデザイナーは、ユーザーのインサイトに基づいてデザインをサッと反復、改良、改善することができることから、最終製品でユーザーのニーズとビジネス目標がきちんと満たされるようになります。

プロトタイプの作り方

UXデザイナーやプロダクトデザイナーは、一般的にプロトタイプのプロセスを担います。その際、UXリサーチャー、デベロッパー、ステークホルダーなどの他のチームメンバーと協力して、要件の収集や、スコープの確定、アイデアの具体的なプロトタイプへの変換を行います。

デザイナーは、さまざまなツールや方法論を使って、アイデアのインタラクティブなビジュアル表現を作成したり、ユーザーインタラクションのシミュレーションを行います。

MVP とは

MVP(実用最小限の製品)とは、初期ユーザーの主要なニーズに対応することを目的とした、核となる特徴と機能しか備わっていない「製品の簡易版」です。これは、最小限のリソースと投資で、製品アイデアを市場でテストして検証することを目的としています。

MVP は機能的な製品であり、これで製品チームはフィードバックの収集や、ユーザーエンゲージメントの測定、反復と機能強化に役立つ貴重なデータの収集ができるようになります。

MVP は、開発コストと市場投入までの時間を最小限に抑えながら、ユーザーに価値を提供することと、製品の実現可能性を検証することのバランスをとることを目的としているのです。

MVP の作り方

デベロッパーは通常、選択した技術スタックに固有のプログラム言語フレームワーク、開発プラットフォームなど、さまざまなツールや技術を組み合わせて MVP を構築します。そしてその際、HTML、CSS、Javascript のような基礎的なプログラミング言語や、React、Angular、Vue のようなフレームワークを使う場合があります。

エンジニアリングチームは、デザイナー、ステークホルダー、その他のチームメンバーと協力して、MVP の特徴、機能、優先順位を確定します。そして開発プロセスには以下が含まれます:

  • 中心となる機能の実装
  • 必要な API やデータベースとの統合
  • テスト可能な環境への製品のデプロイ

概念実証(PoC)とは

概念実証(PoC)とは、アイデアの実現性や可能性を検証することを目的とした小規模なデモンストレーションや実験のことです。PoC は通常、企業でソフトウェア開発に多大なリソースを投資する前に、製品や技術の技術的・機能的側面をテストするのに使われます。

PoC は、鍵となる仮説を検証したり、アイデアの具体的な特徴や能力をステークホルダーや投資者に紹介したりすることに重点が置かれています。また、そのコンセプトが実現可能であり、問題を解決したりニーズを満たしたりする可能性があることを証明するものになります。

完全に機能する製品とは違って、PoC は生産可能なものでも、対象ユーザーに配備されるようにデザインされたものでもないかもしれませんが、その目的はアイデアの実行可能性と価値を実証し、さらなる開発と投資への道を開くところにあります。

PoC の作り方

PoC 構築は、デベロッパー、エンジニア、デザイナー、SME(その道の専門家)で構成される部門横断チームが担います。連携して、シンプル化されたソリューションのデザインや実装を行い、コンセプトの実行可能性を検証するための中核的な特徴と機能性に重点を置きます。

デジタルイノベーションの性質が多様であるため、PoC を構築するのに組織で使われるツールや技術は様々です。例えば、組織 は Python、Java、C++ を様々な開発フレームワークと組み合わせて使うことがあります。また、PoC の実行や分析をするのに、データ分析ツール、可視化ソフトウェア、シミュレーションプラットフォームを組み込むこともあるかもしれません。

PoC と プロトタイプ と MVP の比較

主な違い

目的と範囲(スコープ):

  • プロトタイプ:デザインコンセプト、インタラクション、UX(ユーザーエクスペリエンス)を視覚化してテストするのに使われる。
  • MVP:製品市場適合性を見つけ、実世界のコンテクストでアイデアを洗練させるために開発される。
  • PoC: 製品の実現可能性と潜在的な価値を実証するのに作成される。

機能レベル:

  • プロトタイプ: 製品のユーザビリティをテストできる限定的な機能。
  • MVPスコープクリープを回避したフル機能。
  • PoC: 機能は必要なく、中心となるコンセプトを披露することが目的。

対象者とタイミング:

  • プロトタイプ: 初期のデザインおよび開発段階で、社内チーム、ステークホルダー、潜在的ユーザーが対象。
  • MVP:新しもの好き、潜在顧客、投資家が対象であり、製品と市場の適合性を検証する。
  • PoCステークホルダー、投資家、潜在的パートナーを対象とし、コンセプトの実行可能性と潜在能力を示す。

類似点と重複点

反復的なアプローチ:

  • プロトタイプ、MVP、PoC は、反復的な製品開発プロセスを採りいれている。
  • いずれも、テスト、フィードバックの収集、製品の改良のサイクルを伴う。
  • ユーザーやステークホルダーからのインサイトやフィードバックが、イテレーションを推進する。

UCD(ユーザー中心のデザイン):

  • チームは、UCD(ユーザー中心のデザイン)の原則を使って、プロトタイプ、MVP、PoC をデザインする。
  • ユーザーからのフィードバックやインサイトは、製品デザインのプロセスを形成する上で重要な役割を果たす。
  • チームは、UXを向上させてユーザーのニーズ市場の需要を満たすのに、イテレーションを繰り返す。

学習と検証:

  • 企業では、ビジネスアイデアや製品コンセプトを学んで検証するために、プロトタイプ、MVP、PoC が使われる。
  • プロトタイプは、フィードバックの収集や仮定のテスト、情報に基づいた意思決定を行う機会を提供する。
  • 組織はプロトタイプを構築し、ユーザーテストと検証を通じてインサイトを得て、製品を改良したり必要な改善を行う。

プロトタイプ、MVP、PoC のケーススタディ

シナリオ:FinTech スタートアップの FinPin は、個人の財務を管理するためのデジタル製品の開発に取り組んでおり、このアプリは、予算編成、経費追跡、財務目標設定のためのシームレスで直感的なエクスペリエンスをユーザーに提供することを目指しています。

プロトタイプ

FinPin は、コンセプトとデザインの段階で、UI を検証して潜在的なユーザーやステークホルダーからのフィードバックを集めるのにプロトタイプを作成します。その際、チームはこのプロセスで、Lo-Fiプロトタイプや Hi-Fiプロトタイプなど、バリエーションを色々と作成します。

Lo-Fi プロトタイプを使うことで、デザインチームは、デザインツールを使ってデジタルワイヤーフレームに移行する前に、まずを使ってテストと反復をサッと行うことができます。なので FinPin のデザインチームは、この Lo-Fi プロトタイプを使って、構造、ナビゲーション、情報アーキテクチャを作成します。

次に、チームは 低忠実度のワイヤーフレームを高忠実度のインタラクティブなプロトタイプに変換します。その際、FinPin のデザイナーは、デザインシステムの膨大なコンポーネント ライブラリと明確に定めれたデザイン言語を活用して時間を節約し、Material UI を使ってインタラクティブなプロトタイプを構築しています。

そして UXPin Mergeテクノロジーを使って、React コンポーネントを使ってプロトタイプとテストを行います。このインタラクティブなプロトタイプの手法により、チームはアイデアを検証したり、ユーザビリティの問題を解決するための正確なデータとインサイトを集めることができます。

このプロトタイプには、カラー、タイポグラフィ、UI コンポーネント、実際のコンテンツが含まれ、チームはエンドユーザーとデザインをテストし、フィードバックをイテレーションすることができます。また、デザイナーは、このイテレーションプロセスで UX を最適化すると同時に、UI のビジネス価値を高めます。

MVP

プロトタイプに対する肯定的なフィードバックを受けた後、FinPin はモバイルアプリの MVP を開発します。その際、コストと時間のかかるモバイルアプリを作成する代わりに、FinPin は製品の中心的な機能を備えたモバイルフレンドリーな Web アプリを開発します。

MVP には、アカウントリンク、支出追跡、基本的な予算管理機能など、必要不可欠な機能が含まれており、機能的なWebアプリケーションを作成し、最初のユーザーを探し出し、彼らがこのアプリのどこを評価しているかを確認することを目標としています。

また、Web アプリでは、Google AnalyticsやHotjarのようなツールを使ってユーザーの行動の追跡や分析をし、今後の改善に役立てることができます。このデータにより、チームは貴重なユーザーのインサイトを集めて仮定を検証し、追加機能にさらなるリソースを投資する前に製品と市場の適合性を判断することができます。

PoC

FinPin は、革新的な金融予測技術をアプリに導入することを目指しており、技術の実現可能性を示すために PoC を構築して、資金を確保するために投資家にアイデアを売り込みます。

PoC は、予測アルゴリズムの小規模な機能バージョンを開発し、それを MVP に統合することに重点が置かれています。また、MVPとの統合により、FinPin はテクノロジの精度とパフォーマンスをテストし、技術的な課題や制限を評価して、潜在的な投資家やパートナーにその潜在的な価値を示すことができます。

そして PoC の結果は、予測技術を最終製品に統合するスケーラビリティと実行可能性についての決定に役立ちます。

上記の例は、企業やスタートアップがプロトタイプ、MVP、PoC を使うシナリオが3つ示されていますが、この例をまとめると、次のようになります:

  • プロトタイプ:デザインテスト
  • MVP:ベータテスト
  • PoC:コンセプトテスト

UXPin Mergeによる高度なプロトタイプ

MVP を作るにせよ、PoC を行うにせよ、プロトタイプは、開発プロセスにコミットする前にアイデアをテストして検証するのに非常に重要です。

UXPin Merge のテクノロジーにより、デザイナーはコード コンポーネントをデザインプロセスに取り入れてプロトタイプの範囲を拡大し、ユーザーテストやステークホルダーから有意義なフィードバックを集めることができます。そしてこのインタラクティブなプロトタイプにより、ユーザーやステークホルダーは最終製品と同じように UI を操作できるため、開発プロセスの前に正確なインサイトを得てイテレーションや改善をすることができます。

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